御前崎市内のホットスポット 


 
5号機を撮影していると、機動隊員が飛んで来た
 静岡県御前崎市には不名誉なことだが、地球上で一番危険な原発だと、世界中の人々から指差され、バッシングされている浜岡原発がある。その浜岡原発のもろ風下に、地元の人々が「ガンの多発地帯」と噂し合っている一帯がある。原発事故を起こして大騒ぎしている福島だけでなく、御前崎市にもそんなデンジャラスな一帯があることを、静岡県内でも他の地域の人々や、他県の人たちは知っているのだろうか。おそらく、知らないのではないだろうか。

 僕自身も御前崎市で暮らしていながら、、その周辺の人から実際に話を聞くまでまるっきり知らなかった。僕が偶然知ったのは、今年に入ってから。さっそく、衝撃的な情報を行きつけの理髪店で披露した。すると従業員は甲高い声で聞いたことがあると答え、地名まで口にしたのだ。さらに、原発立地交付金で建てられた市内の保養施設「ぷるる」で何名かを相手に話すと、多くの人がその噂を聞いたことがあると言っていたから、御前崎市民の大半が周知していると理解して間違いないだろう。この地域のガンの発症率が他と比較してどの程度多いかとか、死亡者がどのくらいあったとかの調査は、これから先の課題とします。


 そのホットスポットの至近距離に、中部電力の社員が家族と共に入居している団地がある。2009年8月11日に発生した駿河湾沖地震のときに、御前崎市では6弱程度の揺れだったが、地盤の極端に脆弱な浜岡原発では、特に5号機がひどい揺れ方をしてガタガタになったことは何度もこのホームページで書いた。放射能漏れ事故を起こし(使用済み核燃料プールの水が溢れたと聞いている)、多量の放射能を排気塔から放出したのだが、それがこの地域に集まったらしい。


 「悪事身に返る」ということわざがある。悪事を犯すと、自分の身に返ってくるという意味だが、自分たちがばら撒いた放射能が周辺地域に集中し、愛する家族と共に暮らす団地にも降りそそいだのである。浜岡原発で働く中電社員には放射線管理者の資格を有する者が多い。このときの中電社員の大慌て振りが目に浮かぶが、駿河湾沖地震の直後に団地から子供たちの姿が消えたと僕に教えてくれたのは、やはりこの付近に住んでいる人物だった。  


 もちろん、地域住民には何も知らされてはいない。放射能がばら撒かれたことなど地域の人々は知らないから、浴び放題である。その後、団地がどうなったかというと、入居者の多くは立ち退いてしまい、1棟に付き数家族が住んでいるという閑散とした状態となった。しかし昨年の3・11以後は、原子炉がすべて停止したため放射能の垂れ流しが少なくなった。そのせいで社員も安心したのだろう、少しずつ戻ってきて住宅も半分近くが埋まるようになった。敷地内には立ち入れないので、外から眺めた上での判断になるのだが・・・・。


 浜岡原発では、原子炉を全面的に停止する以前は、日常的に放射能がばら撒かれていたことは中部電力も認めている。「環境や人体に影響を与えない量」だというが、周辺環境では奇形植物が発見され、1基だけで毎秒80トンの冷却水を放出している海域では背骨がS字型に曲がった魚が泳いでいる。今年の3月4月には、毎日のように1キロ余り離れた浜岡原発東側の海岸に出かけていたが、そのとき釣り人から見せられた。「食べないほうがいいだろうか?」とその人が聞くので、「絶対に食べたらダメですよ」と言うしかなかった。それに、人体に影響を与えないと公言しているが、浜岡原発のすぐ近くで、「ガンの多発地帯」なる地域が現に発生しているのである。 


 浜岡原発の温排水(冷却水)で育ったクエは成長が早いと言われているが、このような危険なものを食べる人々の気が知れない。それから、2011年3月11日の福島原発震災後、お茶やタマネギから暫定基準値を超える放射性セシウムが検出された。特に海外に輸出されている静岡茶が問題になり、福島の事故の影響ということで片付けられてしまったが、300キロも離れた福島から飛来したとはどうしても考えられない。僕は、日常的に放出されていた浜岡原発による放射能汚染のせいだと信じているのだ。


 少し前までは国策だったのだろうが、現在ではすっかり迷惑施設になってしまった原子力発電所。3号機、4号機、5号機を目いっぱい稼動させても全体の15%しか電気を賄えない浜岡原発のために、東海地区の優良企業だった中部電力は全国的に忌み嫌われる存在となった。名誉挽回するのは並大抵の努力では無理だろうが、いたって簡単な方法もある。原子力からの撤退の意思を表明するのである。他の電力会社の先陣を切って撤退の意思表示をすれば、たやすく名誉挽回できる。それしか方法はない。


                                      2012年10月10日