御前崎市の土地価格の下落とアパート入居率


 
御前崎市内のアパート
 事故後、福島では放射線量の高いホットスポットの土地代が、8%以上下落したという話を聞いている。御前崎市でも、過去5年間の土地代の下落率は0・8%〜2%台で推移していたが、今年になって6・7%というように急降下したらしい。これは、県内ではトップの下落率だという。土地代の値下がりは来年も続くだろうと地元では噂されているが、その原因は浜岡原発が存在するからである。だから、原発周辺や海岸に近い地域がもっとも大幅に下落している。 

 2年余り前の2009年9月に私は、「アパートや借家の建設ラッシュの意味するものは!」という文章を書いた。その頃、原発から程近い市内の浜岡地区はちょっとした建築ラッシュだった。浜岡の中心部である池新田を例に取ると、車を走らせながらざっと見ただけでも、10ヵ所ほどでアパートや借家が建てられていた。おまけに、浜岡原発の西側には、部屋数133室のビジネスホテル「くれたけイン御前崎」がオープンしたばかりだった。新しく建ったこのビジネスホテルも、応援で他の土地からやって来る浜岡原発の工事人の宿泊をもくろんでいた。


 その当時、前々から盛んに噂されていた6号機建設がいよいよ本決まりになったという情報が飛び交っていたらしい。農協は、農業従事者にアパート経営を持ちかけ金を貸したが、6号機建設は用地買収などで大幅に遅れ、もたもたしている間に福島第一原発の事故が起こったのだ。そのときに建てられたアパートがどういう状況かと言えば、部屋が半分も埋まれば良いほうで、新野川のほとりに建ったアパートなど、22室ある中で入居者はたったの2組という悲惨さである。想像するに、自殺か夜逃げを考えている経営者もいるのではないだろうか。この先、浜岡原発の6号機増設は永遠に望めそうもないので、あとは廃炉工事の景気をあてにするしかない。


 浜岡原発の城下町である御前崎市で暮らしていると、原発を危険なものとして嫌悪したり、忌避する市民感情は日を追うごとに増しているようで、浜岡原発の役割りはもう終わったんだと思えてくる。確かに浜岡原発は、過疎の町の活性化に一役買った時代もあったかも知れないが、その栄光は過去のものである。中部電力の社員は、いまだに「安全です!」とバカの一つ覚えのように言っているが、我々の安全と彼らの安全には大きな開きがある。近所の主婦は、「中電の社員の姿を見ると放射能を連想する」と小声で私に語っていたが、本格的に憎まれる前に原子力からの撤退を考えたほうがベストだと思いますよ。・・・・どうでしょうか、中電さん!




                                        2011年12月29日