プルサーマルについて!



御前崎灯台と波の荒い遠州灘。 
 昨年の5月に、フランスから浜岡の地に「プルサーマル」で使用するMOX燃料が船便で輸送されて来て、ものものしい警備の中で海岸道路を通って浜岡原発の敷地内に運ばれた。それが原因となって私はこのホームページを立ち上げることになったのだが、それから1年半が過ぎた。今月6日に中部電力は、定検終了後の来年2月から、浜岡原発4号機で計画していたプルサーマルの実施時期の延期を正式に決めた。これで延期は数度目になる。今回延期となった直接の原因は、昨年8月に起こった駿河湾地震の影響により、4号機の安全性評価が間に合わないと結論したからであった。 


 それに4号機の運転スケジュールなどを考慮すると、プルサーマルの実施は大幅に遅れて、再来年(2012年)の春以降に先延ばしされたのだ。私たち浜岡原発の危険を叫ぶ者にとっては、この上ない朗報となった。プルサーマル発電の延期を決めた理由として、中部電力静岡支店の小野田支店長は、「国が2006年に提示した、新しい耐震指針に照らした4号機の安全評価が終わっていないから」と説明した。さらに、「地域の住民に説明する準備が整っていないから」というのも理由のひとつとして挙げていたが、昨年8月の駿河湾地震で5号機が異常とも言える大きな揺れを観測したことに対して、国が浜岡原発の安全性に疑問を抱いていることもプルサーマルの実施が遅れることとなった背景にある。


 延期の決定を受けて川勝静岡県知事は、「中電が地元との信頼関係を優先した結果と受け止めており、実に適切な判断でした」とコメントしたが、県や地元住民は浜岡原発の基礎部分に拭うことのできない疑いを抱いている。浜岡原発の原子炉の真下に、本当にしっかりした岩盤は存在するのだろうか、という疑問である。本当に存在すれば、あれほどまでに異常な揺れは観測しなかったはずだった。県や住民が疑惑の目で見ていることを良く知っている中部電力は、「来春までの予定で進めている地質調査の結果を速やかに国に提出し、良い安全性評価がなされることを期待している」とコメントした。名古屋市で記者会見した水野中電社長は、「プルサーマルは国の原子燃料サイクルの一環で重要なプロジェクト。地元の理解を得ながら、早期に実施できるよう注力していく」と述べた。


 新しい耐震指針に照らした4号機の耐震安全性の確認(バックチェック)について、国からの評価が出ていないことが大きな理由だが、その他の延期となった理由としてはこんなのがある。3号機及び4号機での多数の機器の点検漏れが明らかになり、県や近隣4市からは改善を求める厳しい指摘が相次いだのだ。その内容を詳しく説明すると、浜岡原発では今年3月に104機器に及ぶ点検漏れが発覚し、原子力安全保安院は中電に対して、「保安規定に違反する」として厳重注意した。さらに10月にも27機器の点検漏れが見つかり、総点検を実施したところ、新たに77機器の点検漏れが発見されたのだ。


 多数の点検漏れ問題が発覚し、中電のずさんな管理体制や安全意識の低さに対して、県では浜岡原発の安全管理への懸念を深めていたため、「延期は適切な判断」と即断した。原子力推進派として知られている御前崎市の石原市長も、プルサーマル延期に対して「妥当な判断」とした上で、「国の安全担保がない限り、前へ進めないというのが一貫した認識だ」とのコメントを出した。浜岡4号機でのプルサーマル発電が実施されることによって、地元4市に60億円の交付金が支払われる予定だった。しかし延期となれば、当然、国の交付金の支払いも遅れることになる。それによって、各市は交付金を財源とした事業の見直しを検討しなければならなくなった。


 その地元4市とは、御前崎市を筆頭に、隣接する牧の原市、菊川市、掛川市である。この60億円の核燃料サイクル交付金の配分率は、浜岡原発のお膝元である御前崎市の取り分がもっとも多く、68・5%。牧の原市が17・2%。菊川、掛川両市が7・15%ずつということになっている。どうしてこのような分配になったのだろうか、不思議で仕方ない。もし浜岡原発で重大事故が起これば、その被害は御前崎市も菊川市もそれほど顕著な違いはないはずである。全滅と思って、まず間違いない。それなのに、御前崎市が半分以上取っているのだ。その御前崎市では、60億のうちの68・5%の取り分で、市道整備や市立病院の医療機器購入など8事業に交付金を当て込んでいたのだが、見直しを求められることになった。


 牧の原市でも、水道施設の耐震化工事を予定していたし、消防車両数台の購入も検討していた。それに掛川市や菊川市でも、体育館や庁舎の建て替えを計画していたのだが、交付金の支給が遅れることになったので計画の調整が必要になった。行政のトップとしたら頭の痛い結果となったのだが、市民の中にはプルサーマルに対する根強い反対意見があるため、その意見に配慮したのか、牧の原市長、掛川市長、菊川市長らは揃って延期を支持ような発言をしていた。御前崎市の石原市長も、多分強がりだろうと思うが、「ある程度の変更は念頭にあった」とコメントしている。


 


 九州電力玄海原発3号機が、国内初のプルサーマル営業運転を開始してから12月2日で丸1年になる。玄海原発に続いて、今年の9月18日には国内で2例目となるプルサーマル発電が福島原発3号機で実施された。その次は、四国電力伊方原発3号機で実施予定だったが、計画の中止を求める市民団体が、伊方原発周辺の海底にある活断層の詳しい調査を行なった。その結果、いつ地震が発生してもおかしくないとして、耐震安全性評価のやり直しを国の求めたのだ。それによって、伊方原発のプルサーマル計画は棚上げされた状態となっている。   
人口3万5千人余りの御前崎市の中心部。


 玄海原発3号機のプルサーマル発電は順調に行なわれているようだった。この1年間、目立った運転上のトラブルはなく、運転状況を確認している原子力安全保安院は、「設備のトラブルやパラメータの異常はない。至って安定的に運転を続けている」とコメントしている。古川福岡県知事も11月19日の定例会見で、「非常にスムーズに運転されていると聞いている。ここでの安全運転が、他の地域でのプルサーマルに繋がるだろう」と順調な運転を評価していた。ところが、今年の12月9日昼過ぎから、1次系の冷却水に含まれる放射性物質のヨウ素の濃度が通常のおよそ2倍の数値を示し、翌日の正午過ぎには通常の4倍まで上昇したのだ。その日の夕方には原子炉を手動で停止し、原因調べに取りかかった。


 原因について九州電力は、「原子炉内の核燃料を覆っている金属に小さな穴が開いた可能性がある」と説明したが、よく原因のわからないまま、今月下旬から始める予定だった定期検査を約2週間前倒しすることとなった。地元玄海町の住民からは、「安全最優先の姿勢が見られる」として同社の対応を評価しているが、プルサーマルを実施している原子炉だけに、徹底した調査を求める声も挙がっている。


 ウランの糞ともいうべき、実に厄介なプルトニウムを消費するため高速増殖炉「もんじゅ」が建設された。しかし、1995年の「もんじゅ」のナトリウム火災事故から高速増殖炉の見通しが立たなくなり、溜まりに溜まったプルトニウムを普通の原子炉で燃やそうと考えた。それがプルサーマル計画の始まりであった。プルサーマルの危険性はいくつかある。もっとも考えられる危険とは、ウランを燃焼させるためにつくられた原子炉で、予定されていなかったプルトニウムを燃焼させることである。プルトニウムとは、皆さんも知っているように核兵器の原料です。そのため核分裂が極めて起きやすく、原子炉を停止させる制御棒の効きが悪くなると言われている。


 それから、中部電力は原発の寿命は20年と言っていた。最近では、電力会社すべてが結託して60年は使用できると言い出して耐用年数を無理やり引き伸ばしているが、それを納得できる根拠というものは何も示されていない。プルサーマル発電を実施する4号機は、1993年の9月3日に営業運転が開始されたので、今年で17年目ということになる。初期の頃に示していた原発の寿命が尽きる年数まで、たった3年しかない。そんな年老いたよぼよぼの原子炉で、より危険度が増すと懸念されているプルサーマルを行なうこと自体が、常識的に考えても間違っているのではないだろうか。それに、6年前の2004年8月に「コンクリート偽装」が内部告発によって明らかになったのは確か4号機であった。難しい説明は抜きにするが、原子炉を覆っている大切な建物に、品質の劣悪なコンクリートが使用されているのである。そんな4号機で危険なプルサーマルを行なうことは、まさに自殺行為である。




                                             2010年12月16日