中電のウソ


 その5 原子力発電が環境にやさしいって本当なの?


 
 マリンパーク内にある滑り台。子供にとても人気です。
 今年(2009年)1月30日の新聞の社会面に、電気事業連合会が雑誌に掲載した「原子力発電はクリーンな電気の作り方」という広告のコピーについて、日本広告審査機構(JARO)が「原子力発電はクリーンという表現を使うことはなじまない」と裁定し、電事連に対して表現の再考を促した、という記事が載っていた。裁定は、昨年11月25日付け。JAROが原発の広告について、再考を求めるのは異例なことなのだという。日本広告審査機構は、神奈川県に住む男性の苦情申し立てを受け、学識経験者7人でつくる審査委員会で審議した結果、「安全性について充分な説明もなしに、発電時に二酸化炭素(CO2)を出さないことだけを捉えて、『クリーン』と表現すべきではない」と結論づけたのだ。


 申し立てによると、広告は昨年4月発行の雑誌に掲載されたものであるが、それを読んだ男性がその翌月、日本広告審査機構に、「事故時の放射能汚染の危険性があり、とうていクリーンとは言えない」と申し立て。これに対して電気事業連合会は、「発電の際に、CO2を出さないという特徴をクリーンと表現したまで・・・・」と説明し、裁定に承服しかねるということでJAROに対して不服申し立てを行なっているという。


 原子力発電は、神奈川県の男性の訴えた「事故時の放射能汚染の危険性」のほかに、地震による複合災害や高放射性廃棄物の問題や、不要となった原子炉の廃炉や解体の問題などがあります。いずれ近い将来、危険で割りに合わない原子力発電から国も電力会社も撤退することになるのでしょうが、人類の長い歴史の中でわずか50年間か60年間、原子力の平和利用というお題目を掲げてパンドラの箱を開けたために、我々の子孫は2万年とも3万年とも言われる気の遠くなるような長きに渡って管理していくことを義務づけられることになったのです。


 原子力はクリーンという表現にこだわった人々は、原発の建屋内にお住みになったらいかがでしょうか。
ところで浜岡原発には、廃炉となった1、2号機を含めて2009年現在で5基の原子炉があります。6号機建設の話がありますから、もしかすると数年後には6基になっているかも知れません。原子力発電所が閉鎖になった時に、これらの建屋はコンクリートで何重にも塞がれ、「人類のあやまち」と入口に記されて近づく人影もなく、浜岡砂丘の片隅に野ざらしとなって幽霊屋敷のように永遠に建ち続けているのではないでしょうか。御前崎市民の恥のモニュメントとして・・・・。


 それから、テレビ番組などで化学実験を行なっている「米村でんじろう」という人物が、最近良く中部電力のコマーシャルに登場するようになりました。私のところにも中電からパンフレットが送られてきたのですが、そこには、「原子力は発電する時に、CO2を出さないんだよ。風力発電や太陽光発電といっしょなんだよ」と彼の顔写真と共に、彼自身のコメントらしきコピーが記入されていました。これを見ると、何も知らない人々は、「原子力発電って、エコなんだ!」と勘違いしてしまいます。原発の問題は、人類を危険にさらしている点を含めて数多くの問題があります。それなのに、「風力発電や太陽光発電といっしょだね!」と科学者を名乗っている者が、テレビという影響力の強い媒体を通して、このような安易な発言をしても良いものでしょうか?


 中部電力は「CO2を出さない!」と強調していますが、実際にはCO2よりももっと悪質で、もっと問題視されなければならない放射能という毒物を海に垂れ流し、排気塔から平然と排出して御前崎の空を汚しています。「クリーン」だとか、「環境にやさしい」とか、中電が強調すればするほどクリーンではないと言っているように聞こえるのは果たして私だけでしょうか。原子力発電がクリーンで安全なエネルギーであることを本気で主張したいのなら、この次は巨大消費地である名古屋周辺に原発を建てたらいかがでしょうか?御前崎市のような僻遠の地に建設したのは、重大事故の時に犠牲者の数が少なくて済むという考え方が根底にあったからではないでしょうか。


 


 本当に環境にやさしい発電方法なら、風力発電だってあるし、太陽光発電だってある。でも、太陽光や風力では出力がわずかであり、膨張し続ける現在の電力需要に応じ切れないと考える人もいる。しかし日本大学の長井助教授は、日本全国の海岸線に風車をつくって本格的に始めれば、国内需要の40%を賄えると言っています。それに、いま稼動しているものよりももっと回転力のある風車や、弱い冬の太陽光だって効率よく吸収できる方法を開発すれば、この計算よりもズッと多く電力を供給することができます。それから、地熱エネルギーを使って発電する方法だってある。日本は資源のない国だ。だから原発だ、とさんざん国は言ってきたが、地熱エネルギーなら日本国中どこにだってある。つまり、温泉の蒸気で発電するのだ。  
御前崎市の海岸線に設置された風車。


 それに、CO2の問題はあるが、天然ガスを使用して発電を行なうという方法も見直されるべきだと思う。横浜市の臨海地区にある東京電力横浜火力発電所では天然ガスを使って稼動しているが、ここには発電効率約50%の高効率タービンが4基あり、全体で140万キロワットの発電を行なうことができる。この電力は、人口370万人の横浜市の電力を自給できる能力があるという。4基ある発電機を需要に応じて運転しており、原発のような深夜に余剰電力が発生することもなく、環境にも良く、捨て場に困る高放射性廃棄物が発生することもない。東京湾岸にはすでに同様の発電所が7ヵ所も建設されていて、原発10数基分の電力を生産しているという。


 それに、発電所の建設コストが原子力発電所よりもはるかに安いというのも魅力的だった。最近の電力を取り巻く問題を考えても、原子力発電は非常に割高だし危険だし、のちの人類につけを回すような核の廃棄物の問題だってある。原発がなくても電力供給に何の支障もないことが明らかになった今、原子力にこだわる理由はどこにもない。大都会のような電力の巨大消費地の近くに、放射能という猛毒まみれの原子力よりも遥かにクリーンな燃料を使用する発電所を建設すれば、問題はすべて解決するのではないだろうか。




                                                2009年9月12日