危険すぎる浜岡5号機!
静岡県や地元は運転再開の条件として、「東海地震に対する耐震安全性を国が確認すること」を求めている。つまり、原子力安全保安院が許可しないと、いつまでも稼動できないことを意味している。6度目の延期が決定したあと、中部電力の水野社長は名古屋で会見を開き、今後の方針について、「きちんと国に報告して審議を受けたあと、結果を含めて地元に説明し、理解を得た上で再開する」と、苛立った様子で説明した。再開のめどに関しては、「決定しだいお伝えする」と明言を避けた。原子力安全保安院・浜岡事務所の橋本所長に今年7月30日に会って話をした時には、あまりにも中部電力寄りの発言や態度に、中電との癒着を疑ったものだが、彼も今回のことに関して頑張ってやってくれているのだろう。これから更に5号機問題が大きく取り上げられ、危険すぎる原子炉として永遠に封印してくれたらと願ったのだが、残念ながら、結果的にそのようにはならなかった。 11月17日付けの新聞各紙で、原子力安全保安院の合同ワーキンググループが「重要な施設の機能維持に支障がないことを確認した」との見解案を示したことが掲載されていた。浜岡5号機は東海地震に対しても支障なしと結論づけられ、運転の早期再開をめざす中電の主張に理解を示したのだ。安全保安院によると、今後は建物の耐震構造を専門的に検討する「構造ワーキンググループ」に委ねる形を取り、5号機の運転再開を認めるかどうか再度検討するというが、おそらく形式的な調査や検討で終わるだろうと考えられる。最大の関門とも言える国のお墨付きをもらい、中電もほっとしていることだろう。永遠に停止してくれたらと願っていた5号機は、これで運転再開に向かって1歩も2歩も前進し、おそらく来年そうそうに稼動することになるだろう。 運転再開の決め手となったのは、中電が示した、「5号機増幅特性を暫定的に反映した仮想的東海地震の地震動評価結果」という小難しいタイトルのついた報告書であった。原発直下にアスペリティー(強い揺れを生む断層面の固着部分。原義は荒々しい)の一部があると仮想して、昨年の駿河湾地震で5号機の揺れが突出した増幅特性も加味して地震動を算出したというのだ。5号機の突出した揺れとは、揺れを増幅される性質を持った「低速度層」の存在であった。こんな厄介な地層が5号機の真下にあるというのだ。それに対して安全保安院は、「強い地震波を出す区域が原発直下にあると仮想したモデルで、5号機の揺れの増幅を考慮しても耐震性に余裕がある」との見解を示した。つまり、低速度層の特性を考慮しても東海地震の耐震安全は確保されると結論づけたのだ。
しかし、あれだけ頑張っていた安全保安院はどうして急に腰砕けになったのだろうか。中部電力との間に、どのような取引がなされたのだろうか。それから、以前中部電力は安全上重要な施設や機器は1000ガルの揺れにも耐えられると説明していたが、今回提出した評価では、1450ガルの揺れにも耐えられると余裕度は更に大きくなっている。「ガル」とは地震による地盤や建物の揺れの大きさをあらわし、数値が大きいほど揺れも大きいことを示している。昨年の駿河湾地震で各原子炉建屋に設置されている地震計が示した数値は、1、2号機で109ガル、3号機は147ガル、4号機は163ガルであった。そして、今回問題になっている5号機は4号機建屋からわずか400メートルしか離れていないのだが、4号機の2・5倍以上の426ガルを観測したのだ。これを異常と言わずして、何を異常と唱えれば良いのだろうか。 そして、5号機は50ヵ所以上の損傷や異常個所や不具合が発生し、パイプの破断事故や放射能漏れが起こり、異常な数値の放射能が環境中に放出されたという事実も報告されている。それから、このことにはあまり触れられていないが、120ガルの揺れで作動されるはずの自動停止装置が作動しなかったので、4号機と5号機は自動スクラム(緊急停止)することとなった。まさに、重大事故発生の寸前だったのだ。今回、5号機の地下にあることが確認された「低速度層」という揺れを大きく増幅させる特性を持った地層。まるでコンニャクのような地層の存在を認めながら何ら耐震工事を行なうでもなく、地震動に対する5号機の強さをあらわす数字を強引に変更しただけで、厚顔にもどんな地震にも耐えられるとした中部電力と、中電の言い分を認めて、5号機の真下にやわらかい地層があるという問題を残したまま運転再開を許可した原子力安全保安院。もし東海地震で5号機が取り返しのつかない事故を起こしてしまった時、国民に対してどのような謝罪をするのだろうか。 東海地震を仮想するというやり方は間違っていない。しかし、地震動の影響や算定方法を正確に提示してこそ、はじめて役に立つ資料となりえるのだ。中央防災会議の想定東海地震では、浜岡原発直下は強い地震動は起こらないとしている。まるで、浜岡原発周辺が真空状態になり、そこだけ守られた状態で地震被害を算出しているのだ。こんな計算だと、たとえマグニチュード10を超える地震がやってきても安全ということになってしまうだろう。 5号機運転再開を許すと、4号機で実施予定のプルサーマル、それから中電の熱望している6号機建設に道筋をつけることになるので、浜岡原発の危険を叫ぶ私たちとしては、どうしても5号機には当分の間休んでいてもらいたかったというのが本音だ。それから最後にひと言だけ言わせてもらうと、5号機の建っている場所はもともと沼地だったという説もあり、それに、5号機は従来の建設費の30%減で建てられている。もしかすると、5号機の異常な揺れの原因はこのあたりにあるのではないだろうか。 2010年12月9日 |
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