日常的に排出されている放射能の恐怖!


 
ある人が、「愚かさの象徴」と揶揄した池宮神社の大鳥居。
中部電力の協力金で建てられたそうです。
 過去何10年間も電力会社は、「日本の原子力発電所は、いままで放射能をいっさい出していません」と嘘をついてきた。私が住んでいる御前崎市には、中部電力の浜岡原発があるのだが、そこではいまでも何か事故が起こると、いち早く、「放射能漏れはなかった」という情報を中電はマスコミや行政に伝えている。そのあと、協力会社や下請け業者に命じて放射能漏れの検査を行なうのだ。小規模程度の事故の場合なら、先に放射能漏れがなかったと伝えるように、というマニュアルが中電側にあるのだと言われている。 


 昨年8月11日の早朝、駿河湾地震が発生した。マグニチュード6・5でした。この時にとりわけ5号機は大きな揺れを観測し、制御棒の駆動装置の故障や使用済み核燃料プールの放射能濃度が通常の50倍に上昇するなど、30件とも40件とも言われる損傷や不具合が発生したのでした。最終的に、損傷や異常個所は50数ヵ所まで増えたそうです。リアクター建屋内の放射能汚染に対して多くの下請け労働者が動員され、昼夜ぶっ通しで除染作業にあたった結果、通常とは比べものにならないぐらい多量の放射線に作業員が被ばくしたと聞いています。中電や行政が過去何度となく、「浜岡原子力発電所は安全だ。どんな大地震がやってきても大丈夫!耐えられる!」と断言していたのに、たったマグニチュード6・5の地震でガタガタになったのでした。想定される東海大地震の規模は、マグニチュード8から8・5と言われているのです。


 この時にも中部電力の発表はありました。しかし、5号機で多量の放射能漏れ事故が発生していたのはマスコミも御前崎市民の多くも周知していたので、さすがに厚顔無恥な中電の広報課も、「放射能漏れはなかった」という発言はできなかった。では、何と発表したのかというと、「漏れた放射能は微量で、外部への影響はいっさいありませんでした。それから、みなさんがもっとも懸念されている人体への影響もありません」と告げたのだった。そして、そう発表された数日後、100メートルの高さを誇る排気塔から、決して微量ではない放射能が排出されたのだ。


 少なからぬ量の放射能が大気中に放出されても、市民には地震事故のあとだからという思いがある。だが、この巨大な排気塔からは日常的に、中電がたびたび口にする微量の放射能が排出され続けていて、御前崎市の美しい空を汚染しているのです。排気塔を思い切り高く築いたのは、排出した放射能を拡散させるという目的のためでした。中部電力も以前は風向きなどを考慮して、陸から海側へ風の吹く時を選んで排気塔からの放出が行なわれていた。ところが、最近では中電側のそんな配慮もなくなり、風向きに関係なくいつでも放出されるようになったのです。それに原発はすごい熱を出すので、海水で冷やし、その水を海に捨てています。これが放射能を含んだ温排水で、毎秒数10トンも排出しているそうです。それに対しても原発周辺の住民はほとんど無関心ですから、海は汚れっぱなしです。


 


 何年か前のことですが、オーストラリアから来た若い女性が、浜岡原発が町のすぐ近くに位置していると聞いて顔をしかめ、「クレージー!」と叫んだそうです。確かに浜岡原発は、私の住まいからも1キロ余りしか離れていません。毎日のようにバカ高い排気塔からは放射能が排出され、排水口から垂れ流された放射能まじりの温排水で海はいちじるしく汚染されています。原発と隣り合わせで生活する御前崎市民への放射能の影響に対して中部電力は、「ごく微量であり、環境や人体への悪影響はない」と繰り返すが、たとえ微量の放射能であっても影響がないわけがない。それに、ちゃんとした調査もしないうちから、そのような結論を出すこと自体がおかしい。放射能漏れを調べる前から、放射能漏れはなかったと報告するのと同じではないだろうか。  
1基の高さは100メートルを誇る排気塔。


 ごく微量であっても、放射能汚染されたチリや埃を吸うと、その放射性物質が体内に取り込まれます。体内に侵入した放射能は、自然排出されることはまずありません。蓄積されるのです。いくら微量であっても、10年間そのようなチリや埃を吸い続けたなら10年間分が蓄積します。これが怖いのです。ごく微量だからと安心しているうちに、いつの間にか内部被ばくの犠牲者となっているのです。


 他でも書いているのですが、放射能被ばくには人体表面からの被ばくである「外部被ばく」と、人体内部が被ばくする「内部被ばく」があります。人体内に放射性物質が侵入することによって内部被ばくが生じるのですが、内部被ばくした場合は、体内に沈着した放射性物質が放射線を出し続けることを意味しています。つまり、ガンなどの病に侵されやすくなるのです。放射能(線)とガンの因果関係は全世界の先進国が認めています。放射性物質が体内に入る経路は、呼吸、飲食、及び皮膚を通して入る3通りがあると一般的に言われています。呼吸によって入る場合は、先ほどから繰り返し述べているように、放射能汚染されたチリや埃などを吸い込むことで内部被ばくします。飲食での場合は、放射能汚染した飲食物を摂取するか、汚れた手で食事をすることによって被ばくします。放射能汚染した野菜や肉類を調理して食べた時にも、内部被ばくする危険性は大です。それから、放射性物質が皮膚表面に付着しただけでは内部被ばくとはならないのですが、皮膚の傷口から被ばくすることはあります。


 内部被ばくした場合は、放射線のエネルギーは小さくても、人体に対する悪影響は甚大であると考えられています。しかし、内部被ばくの線量を測定することは極めてむずかしいとされていて、外部被ばくで求めた数値を内部被ばくにも適用できるかというと、それは無理なようです。外部被ばくの数値を内部被ばくに適用すると、多くの場合「健康に影響ない」となるからです。呼吸によって体内に取り込まれた放射性物質(チリや埃)は、たいていの場合ごく微量です。でも、外部被ばくと比較して内部被ばくのほうが遥かに恐ろしいと言われていて、体内に取り込んだ微小な核(汚染されたチリ)は放射線を半永久的に放射し続け、ガン発症や白血病を病む原因になっています。それに、原発周辺では白血病の子供が生まれる確率が高いと言われています。


 私は、5年間余り浜岡原発内で一労働者として働いていました。それから2年余り、原発から完全に縁を切ったいまでも御前崎市で暮らしています。私の住まいから自転車で4、5分も行くと、放射能を排出し続けている排気塔が青空を背景にして聳えているのを望むことができます。空は美しく澄み切っていて、汚染されているようには見えません。地元の人々は中電を信じると言うかも知れませんが、もし放射能に色をつけることができたら、浜岡原発のシンボルともいうべき排気塔から放射能がばら撒かれているのがはっきりと見えるはずです。私たちを緩慢な死に追いやる、おぞましき猛毒を放出しているのです。浜岡原発の労働者でなくても、原発周辺で暮らす人々は、私も含めて絶え間なく放射能を浴び続けています。そのことを、地元の人たちはしっかりと認識するべきなのです。




                                            2010年11月15日