死につつある海!


 

打ち上げられた海草を採集する近所のおばさん

 2005年10月30日に、叶今日子さんがJanJanニュースに載せた「浜岡原子力発電所のもたらした環境破壊〜磯焼け〜」を拝見させていただいて感銘を受けました。磯焼けを「ウィキペディア」で調べると、「海藻の極端な減少によって海藻を餌とする生物の減少が生態系全体に波及し、漁獲量が激減するなどして漁村が疲弊することを指す」と記されていました。また「大辞泉」では、「海の沿岸に生えるコブやカジメなどの海草類が枯れる現象。海水温の上昇や海水の汚染、ウニなどの食害が原因とされる」と書かれていて、その他にも、「一度、磯焼けがおこると数年から10数年間もとの状態に戻らないことが多く・・・・」とか、「海の砂漠化」とも書かれていました。 


 叶今日子さんの文章では、「かつては、(御前崎周辺の海は)海底生物の宝庫で、磯場には命があふれ、アワビ・サザエ・イセエビをはじめ、藻場では稚魚が生まれ育ち、多種多様の魚介類に恵まれていた。しかし、原発ができて、温排水が、とてつもない量で捨てられるようになった。8度も高い温排水が、1基当り毎秒80トンも。5基なので毎秒計400トンにもなる。(中略)それでも、昭和年間の影響は少なかったが、平成に入って磯枯れがひどくなった。しかし、調査されていないため、詳細がわからず、国や中電からの磯やけ情報もない。昭和40年代の海とは比べ物にならない状態。死に絶えて小魚もいない。今、磯やけは沖を東に向かって広がっている」と記されていました。


 以前、浜岡原発で働いていた時に、旧御前崎町に住んでいる元漁師だったという人が同じ職場にいたのですが、この方が「最近は、浜に出かけても海草がほとんど採れなくなった」としきりに嘆いていたのを思いだしました。また、職場には釣り自慢が何名かいました。彼らはほとんど休日のたびに御前崎港の突堤に釣りに出かけているという話をしていましたが、以前は糸を垂らせば容易くかかったのに、最近ではまったく釣れなくなったと、こちらも盛んに嘆息していました。浜岡原発が捨てる温排水のせいで、海草の減少によって海の生態系に狂いが生じ、海藻を餌とする生物の減少を招いたのでした。


 原発では、作り出されたエネルギーの3分の1しか電気として活用されていません。残りの3分の2は廃熱として海に捨てられているのだが、温排水の被害として回遊魚の忌避行動が伝えられている。7度も8度も海水温が上昇すれば、魚にすれば火傷をする温度変化だと言うのだ。しかし、御前崎周辺の海で砂漠化が起こり、魚が減ってもなぜか浜岡原発の排水口周辺には多くの魚が集まっているらしいのです。だから、釣り好きの人にとっての絶好のポイントとなり、数年前にここで釣りをしていたブラジル人が波にのまれて亡くなるという事故も発生したそうです。


 
浜岡原発の排水口。荒波の中、5基並んでいる。


 死亡事故後も釣り人で賑わっているようです。ここで釣った魚を食べる人はいないと思うのですが、さあどうでしょうか。中電は隠そうとしているのですが、原発から大量に垂れ流されている温排水には放射能が含まれています。だから、釣り人がもし自宅に持って帰って愛する家族に食べさせるようなことでもあれば、その人は大馬鹿者と言うしかないでしょうね。無知を責められるべきでしょう。それに、この排水口周辺では奇形魚の存在がしきりに噂されています。やたらデカイのが棲息しているとか、背骨がS字型に曲がっていたとか、尾ひれが曲がったままの魚が釣れただとか、あるいは目のないのがいただとか、眉唾ものの噂が盛んに飛び交っています。


 それから、こちらのほうは比較的に真実味のある話ですが、植物では桜や寒椿に異変が起きているようです。この植物の奇形種を調べていた人が、いつの間にか自宅の電話に盗聴器が仕掛けられていたり、監視されたりして家族がノイローゼになり、結局掛川市のほうに引っ越して行ったそうです。証拠はまったくないが、盗聴器を仕掛けたのは中電の仕業だと噂されている。極めて優秀な情報網を持っていて、地元のことなら他所から嫁いできた人の係累まで調べ上げている中電なら、そのようなスパイまがいのことをやっているのも納得できます。あれこれと書いている私の身も、そろそろヤバイかも・・・・。


 とにかく御前崎の海では漁獲量が減少したので、この周辺の漁師さんはかなり沖合いに出て魚を取っているそうです。それでも、漁村は疲弊しなかった。そして、御前崎の漁師さんから不満の声も怒りの声も聞こえなかった。中部電力から、無理に漁をしなくても充分生活できるほどの漁業補償金が支払われているからである。でも、御前崎の海は漁業関係者だけのものではない。年間を通じて風の強い「ロングビーチ」には、サーフィンやウインドサーフィンの愛好者が全国各地から集まり、大会も頻繁に行なわれています。それに、白砂の「マリンパーク御前崎」や相良の「サンビーチ」は、夏場にはアベックや家族連れの海水客で賑わっています。


 しかし、その美しい海も、放射能汚染が徐々に深刻さを増してきています。海外に例を取ると、イギリス南部のヒンクリーポイント原発の風下地域で、乳幼児の死亡率が高い時期があった。原発から危険な放射能が美しいヒンクリーの空と海に放出され、風下の住人がそれを摂取した結果だという報告が出されている。わずかな放射能でも細胞に対する被ばくは大きく、特に乳幼児にとっての影響は計り知れないほど大きなものがあり、異常なほどの死亡率の高さに繋がったのだ。「海が危険な低レベル放射能を運ぶ」とクリス・バスビー博士は警告している。


 博士の話では、「乾燥した暑い日は、海岸に近づかないこと。放射能を含む土ぼこりが風で飛び、呼吸を通じて肺に入るから・・・・」と警告している。ヒンクリーポイント原発周辺の小児ガンの発生率の分布は、住居が海岸に近いほど高くなると言われている。今回の掲載文のタイトルを「死につつある海」としたのだが、このままだといずれ、「死に絶えた海」というタイトルで文章を書く日が訪れるようになるのではと危惧している。




                                           2011年1月10日