中電のウソ


  その4 浜岡原発が活断層を避けて建てられているって本当なの?


 
今回、地震被害のあった5号機建屋。
 2007年7月16日午前10時13分、新潟県中越地方を中心とする広い地域を地震が襲った。のちに、「新潟県中越地震」と呼ばれたこの地震の規模はマグニチュード6・8。この地震によって、原子力の推進派がその存在を否定し続けてきた活断層が、柏崎刈羽原発の敷地内に存在することがはっきりとした。そして、中部電力はどこまでも頑強に否定しているが、浜岡原発の真下にも活断層があることがかなり以前から話題になっていた。H断層の存在である。原子力発電所建設の絶対的な条件は、「原発の真下に活断層が存在しない」ことである。それなのに、どうして柏崎刈羽原発や浜岡原発に建設許可が下りたのだろうか。不思議で仕方がない。


 浜岡原発の真下を走っている断層は「H断層」と呼ばれている。浜岡の頭文字を取ってH断層と名づけられたのではと、私は勝手に解釈していたのだが、断層の形がH型をしているのでそう命名されたとのことでした。この「H断層」が活断層なのか、あるいはそうでないのか、中電側と原発反対派とのあいだで、これまでにも繰り返し議論が行なわれてきた。中電側の説明によると、原子力発電所の耐震設計においては、5万年前に活動した断層を「活断層」と呼んでいる。H断層は、少なくとも約8万年前以降の活動はないことが確認されているから活断層ではない、と言っているのだ。


 中部電力は、H断層は8万年動いていないと主張しているが、約1万年前に活動したという説もあって話し合いは平行線をたどっている。私も中部電力との話し合いに参加したことがあるのだが、私が参加した時にはH断層が活断層か否かの不毛の議論だけで話し合いが終わってしまい、もっと他にも聞きたいことがいっぱいあった私としては、不満の残る1日となってしまった。中電側も、浜岡原発近くの御前崎台地に活断層の存在を認めているのだが、原発に与える地震動の影響は小さく安全上に問題はないとしている。しかし、アメリカの耐震設計基準では浜岡原発は完全に不適合として、まず建設を許可されることはなかっただろうと言われているのに、わが日本国は建設許可を認めたのであった。


 しかし、もし仮にH断層が活断層でなかったとしても、御前崎台地に存在する活断層が原発に直接影響を及ぼさなかったとしても、浜岡原発がやがて襲いかかってくる巨大地震、「東海地震」の震源域に入っていることに変わりはない。そして、まるで驕れる人間どもに対して警告するように、8月11日の午前5時7分に発生したマグニチュード6弱(9月に入って、地震の規模はマグニチュード6・5と訂正された)の地震によって、もっとも新しく建設された5号機の信じられない弱さが露呈されたのだった。


 


 今回の地震はマグニチュード的にも中震と呼んでもよいものでした。私の住んでいるアパートは浜岡原発から直線にして1キロ余り離れているのだが、早朝目覚めた直後に揺れが始まり、寝床の中で、「うわっ、地震だ!」と思っている間に治まってしまった。だから、いまでも小さな地震だったという認識しかない。1995年1月17日の早朝に発生した阪神大震災の時には、伊吹山スキー場に友人たちと行っていて、伊吹山の麓にある民宿に宿泊していた。伊吹山麓から神戸までの距離は約200キロぐらいだろうか。その時も発生した時刻は早朝であり、やはり私が目覚めた直後に揺れが始まった。だから、いまでも地震を感知する動物的な勘があると友人たちから頻繁に冷やかされるのだが、この時に感じた揺れは駿河湾地震の比ではなかった。大きくしゃくるような揺れに驚き、寒いのに大急ぎで布団から飛び出て、慌ててテレビのスイッチを入れたのを覚えている。


 駿河湾地震では、静岡市や藤枝市の被害がいくつか報告され、駿府城の石垣が崩れているのがテレビなどで報道されていた。しかし、御前崎市内や牧の原市では1軒として倒壊家屋の被害はなく、半壊した家屋もなかったと聞いています。住宅の被害と言えば、せいぜい屋根瓦が落ちた程度で、私の住んでいる木造2階建てのボロアパートも無事でした。それなのに不思議なことに、もっとも頑丈さを要求される浜岡原発の5号機では数多くの異常個所や不具合や損傷が発生し、現実に放射能漏れというあってはならない事故も起こっています。いったい、どうなっているのでしょうか。原子炉1基分だけで、数百万人の生命を奪うに充分な”死の灰”を包含している原子炉建屋は、そんなにもろいものだったのでしょうか?


 この浜岡原発では、資源のリサイクル名目で「プルサーマル」発電を来年から行なう計画がある。それに、1、2号機廃炉のリプレースとして、6号機建設の話もちらほらと聞かれるようになった。しかし、ある地震学の専門家は、ここに原発を建てるのは地雷原の上で盆踊りを踊るようなものと警告している。以前、中部電力は、「東海地震が発生したら原発内に逃げて来なさい。原発内の建物がもっとも丈夫で安全ですから・・・・」と自信ありげに言っていたが、いざ地震が発生した時には、まっ先に原発建屋内から逃げ出すのは中電の社員だろうと思いますよ。彼らが、もっとも原発も恐ろしさを知っているのですから。そして強気の発言とは裏腹に、自然の脅威の前で浜岡原発が持たないだろうこともすでに気づいているはずでしょうから・・・・。




                                              2009年8月28日