中電のウソ


  その3 浜岡原発は本当に固い岩盤の上に建っているの?


 
浜岡原発正門付近の桜、2009年4月。
 地元の者ならたいていの人が知っているのですが、浜岡原発の立地しているあたりの地質は、どこまで掘り下げても手で握ってたやすく砕けるような「泥岩」とか「軟岩」と呼ばれている軟弱な地層しかありません。つまり、現在浜岡原発の原子炉が収納されている建屋の真下には、岩盤と呼べるような確かなものは存在しないのです。浜岡砂丘の砂の上に建っていると言っても過言ではないと思います。まさに浜岡原発は、砂上に築かれた楼閣なのです。しかし中部電力は、「浜岡原発は固い地盤まで掘り下げ、そこへ直接基礎をつくっているので東海地震クラスの地震がきても充分に耐えられる」と主張し続けている。


 原発建設のための、事前の地質調査は当然行なわれたはずです。しかし、法律で定められた条件を満たしていない軟弱な地層が、その当時の通産省など関係省庁に提出された書類には、いつの間にか固い岩盤に変わっていたのです。誰かが、悪質で巧妙なマジックを使ったとしか思えません。そして更なる矛盾は、中部電力が東海地震の震源域のど真ん中に位置する浜岡の地に原発設置を申請すると、通産省が次々と許可したことです。原発の基礎部分の脆弱さが周辺で暮らす人のみならず、ネットの情報などで全国の人々に知れ渡ったあとも、中電は頑固に地層に何ら問題はないと言い続けた。「原発は強固な岩盤の上の建っているので、大型地震に対しても大丈夫である。堆積層の軟らかい土の上に建っている場合に比べ、地震の揺れは3分の1に抑えられる」と。中部電力がいう固い地盤とは、いったいどのようなものなのだろうか?


 神戸大学の石橋克彦教授など多くの学者が、「浜岡原発の設計のための東海地震による揺れの強さの見積もりは間違っている」と、その誤りを指摘している。砂丘の町浜岡は、砂と泥が堆積した相良層と呼ばれている地層の上にある。海から運ばれた砂と泥が堆積した地層で、地質学的に言って「軟岩」に位置づけられている。決して耐震性の高い、固い岩盤ではないのだ。地層が軟弱だと、揺れは当然大きくなる。中部電力は、渋々ながらも原発の敷地内に活断層の存在を認めながらも、原子炉建屋であるリアクタービルは活断層を避けて建てられていると発言している。これについて面白い事実がわかったので、これから述べることにする。


 


 2009年8月11日の早朝、駿河湾地震が発生した。マグニチュードは6・5であった。浜岡原発1、2号機はすでに廃炉になっていたので、浜岡にある3、4、5号機のうち5号機が異常な揺れに見舞われ、最終的に中電が発表したところでは50数ヵ所とも言われる損傷や不具合が生じたらしい。放射能漏れ事故なども起こり、外部に放出した放射能量をいつものように過少に申告するなどのようなこともあり、大騒動の中で事態の収拾がはかられた。この地震の時に、5号機原子炉建屋に設置されている地震計が、最大426ガルの揺れを観測したのだ。1、2号機は109ガル、3号機は147ガル、4号機は163ガルであった。5号機の揺れは、1、2号機の3倍以上。あきらかに異常であった。しかし数字を見ると、新しい原子炉ほど観測された揺れが大きくなっていったというのも面白い現象です。


 「ガル」というのは加速度をあらわす単位で、地震による地盤や建物の揺れの大きさにもこの単位が用いられ、数値が大きいほど揺れも大きいことを示している。良く耳にするマグニチュードは、地震が持っているエネルギーの大きさを表しているが、仮にマグニチュードが小さくても震源に近く、しかも軟弱な地盤の上では大きな揺れが発生し、「ガル」の数値も当然大きくなる。中部電力は、今回の地震の際の5号機の異常な揺れに対して、敷地内の地層の脆弱さを一部認め、5号機の地下に低速度層という揺れを増幅する地層が存在していると説明しています。低速度層とは?とネットで調べてみたのだが、凡人の私にはほとんど意味不明な実に難解なことが書かれていました。繰り返し読んだ印象では、地層がまるでコンニャクのようだと理解したのですが、あっているでしょうか?とにかく、5号機の地盤及び地層が劣悪なのは間違いないようです。


 阪神・淡路大震災のあと、日本列島が地震の活動期に入ったと言われているが、2001年に国の耐震基準が変わり、より厳しさが要求されるようになった。新しい基準で計算すると、東海地震が起きた時の浜岡周辺での地震の強さは800ガルとなり、これは阪神・淡路大震災で記録した揺れとほとんど同じ数字であった。巨大地震にも耐えられる設計数値を求め、当然、既存の原発の耐震補強工事に活かされなければならなかった。「浜岡原発は、より安全性を高めるため1000ガルまで耐えられる工事を行なっています」と中部電力はいつものように自信たっぷりな発言をしていたが、駿河湾地震のような中型地震に見舞われただけで、最も新しい5号機は異常な揺れに見舞われ、ガタガタになったのであった。


 使用済み燃料棒を入れたプールの水は溢れ、周辺にいちじるしい放射能汚染を巻き起こした。冷却水を循環するバイプの一部は破断し、120ガルの揺れで自動停止するようにセットされているはずの原子炉は426ガルを記録しても停止せず、自動停止で何とか止めることができたが、重大事故になる直前だったのだ。5号機は建設費を30%削減して建てられたそうだが、その削減個所が基礎部分にも及んでいたとしたら、これは大問題であります。それから地元の人に聞くと、5号機の建っている場所は、もともと沼地だったとのことでした。と言うことは、中部電力は軟弱な地盤だったことを知っていて5号機をいまの位置に建てたことになります。それなら、犯罪そのものではないでしょうか。




                                                2009年8月21日