アパートや借家の建設ラッシュの意味するものは!



 御前崎市内のアパート。
 昨年(2008年)暮れから今年の初旬にかけて、御前崎市の旧浜岡町はアパートや借家のちょっとした建設ラッシュでした。車で市内を走っていても、アパートの空き部屋が最近とみに多くなってきているのを感じ気になっていたのに、なぜか池新田地区だけでも10ヵ所ほどでアパートや借家の建設が行なわれていたのです。それに、部屋数133室のビジネスホテル「くれたけイン御前崎」が今年の7月15日にオープンしました。
 

 浜岡原発5号機建設の直前にも、他の土地から大挙してやって来る労働者の宿泊施設として、今回のような建設ラッシュが起こったと聞いています。かなり以前から噂になっていた6号機建設がついに本決まりになったのかと思い、知り合いの地元の議員さんに問うてみたのですが、ついこの間の地震で5号機が異常な弱さを露呈し、その問題もまだ解決していないので、6号機建設の話は今のところ出ていないとのことでした。それを聞いて安心しています。


 この浜岡で主だった産業というか、主だった働き場所は原子力発電所だけなので、どうしても原発に結びつけてしまうのです。御前崎市は原発に依存し過ぎているということもあるのですが、たとえこれから市が積極的に誘致活動を行なっても、優良企業は浜岡原発があるために気味悪がってこの町に工場を建設することはないと思います。それから、この町は昔からメロンの産地ですが、「浜岡メロン」として出荷すると消費者が買わないのだという話を聞いたことがあります。


 さらに言うと、この周辺で獲れた魚は、たとえタダでもいらないと他の町の人から言われたという笑えない話も耳にしたことがあります。磐田の人が浜岡の友人から鯛をもらい、その人は気味悪がって捨てたのですが、とても美味しかったと電話でお礼を言ったそうです。そうすると、たびたび魚を送ってくれるようになり困っている、という話を聞いたことがあります。浜岡産のものは、原発があるために放射能汚染されていると、よその連中は考えているようです。


 話は戻りますが、あの建設ラッシュは何だったのでしょうか。何か根拠がないと慌てて建てないと思うのですが、不思議で仕方ありません。その時に建設された新野川のほとりの新川橋近くのアパートは、私が住んでいるアパートの近くなので気になって注意しているのですが、春先に完成したはずなのにまったく人の気配を感じることがありません。不動産屋に問い合わせてみると、全22室のうち5部屋に入居者が入っただけとの返事でした。アパートのオーナーは、全室埋まるのを見込んで農協や銀行などで融資を受けて建てたのでしょうから、思惑がはずれただけでなく経済的にも追い詰められ頭を抱えているのではないでしょうか。


 浜岡原発がこの地に建設される以前、中部電力は「原発ができると必然的に働く場所が増え、県外からも人々が働きにやって来るので定着人口が増える」などと景気の良いことを言っていたそうです。1号機および2号機の建設が始まると、農業で生計を立てていた地元の人々は競って民宿を始めたりアパート経営を始めるようになりました。原発周辺には飲食店が急激に増え、以前は退社時になるとケバい化粧にミニスカート姿のフィリピン女性が浜岡原発正門前にずらりと並び、建設労働者などに嬌声をあげながらビラを配り、「店に遊びに来て!」とたどたどしい日本語で勧誘していたそうです。   
海岸通り。別名は原発道路。


 しかし建設が終わると、浜岡の地にジャパユキさんたちは残ったのですが、建設に従事した労働者たちは次の仕事を求めて去って行きました。年一度の定期点検が始まると、再び浜岡に他の土地から労働者が集まり活気に満ちるのですが、その定期点検も以前は90日から120日間かけていたのに、最近ではコスト削減を盛んに言うようになり40日から50日くらいに短縮されてしまいました。施設が古くなるほど慎重に時間をかけて行なわれなければいけないのに、大切な検査にかける期間が短くなっているのが現状です。


 そして、定検が終わると当然彼らも浜岡から去って行きます。いま浜岡ではアパートや借家が過剰気味です。特に古いアパートでは、部屋数に対して3分の2の入居者があれば御の字で、半分とかそれ以下の入居率というアパートがずいぶん目につきます。数多くある民宿も完全に開店休業状態で、飲食店も増えすぎたためにほとんどの店で閑古鳥が鳴いている始末です。ジャパユキさんを置いている店も閉める店が増え、この浜岡でフィリピン女性の姿を見かけることは少なくなりました。93年頃の話ですが、4号機の建設が終わってしばらくすると、労働者であふれていて景気の良かった頃の浜岡よもう一度ということで、民宿やアパート、飲食店のオーナーたちが結託し、名古屋の中部電力本社に出向いて5号機建設を陳情したそうです。


 最初中部電力は、浜岡原発は4号機までと地元住民と固い約束を交わしていたのですが、このような抜け駆けの陳情や要望などが功を奏したのか、地元との約束を反故にした形で5号機まで造ってしまいました。そして、近いうちに6号機を建設すると盛んに宣言しているのです。住民の大半が建設を望んでいると名目の元に・・・・。しかし、望んでいるのは民宿の経営者や飲み屋の経営者、そして新号機建設によって利益をこうむる連中だけです。だから私はアパートの建設ラッシュを見て、直接利権がからんだ連中の陳情が今回もこっそりと行なわれ、それに勢いを得た中電が寝耳に水の6号機建設という暴挙に出たのかといささか慌てふためいたわけなのです。それにしても、一度原発を受け入れてしまうと、次々と原発を造り続けるという悪循環を繰り返すしか、その町はやっていけなくなるようです。




                                              2009年9月24日