不当解雇!
解雇の理由とは、昨年の大晦日の夜に他の会社で働いている友人2名と共に「浜岡ボーリング場」付近にある居酒屋「W」に入ったのだが、その時にU君が手にしていたおでんを咎められ、居酒屋の経営者とちょっとした言い合いになったらしい。そのおでんは居酒屋「W」の近くのコンビニ「サークルK」で購入したのだが、U君に言わせるとそれを居酒屋で食べるつもりはなく、寮に持って帰って同僚と共に食べるために購入したらしいのだ。それに、店の経営者はU君に対して注意したのではなく、彼の友人に厳しい言葉を浴びせたのでカチンときて、感情的な言葉で反論したのだと語っていました。 ちょっとした口喧嘩は発生したが別に手を上げたわけではなく、すぐに店を出たのでそれで終わったのだとU君たちは理解していた。しかしこの小さな事件は、それで終わったわけではなかった。居酒屋の経営者はその一件がよほど頭にきたらしく、「サークルK」に乗り込んでU君らが写っているビデオを借り受け、そのあと調べ上げて彼が浜岡原発内の「T」という会社で働いていると知ると、中電に対して抗議の電話をしたのでした。中電の社員は、浜岡原発内にある「T」の現場事務所を訪ね、地元の人からこのような苦情があったことを所長に告げ、「こんな労働者の存在は困るね。しっかりと注意してくださいよ!」ぐらいのことは言ったのではと想像されます。そのひと言で、派遣社員という弱い立場にいるU君の運命は決まったのでした。 重複するのですが1月12日に解雇を宣告され、今週中の16日までに寮を出てくれと言われたそうです。寮を出る準備ができたら、郷里に帰る旅費を渡すからと告げられました、とU君は私に語っていました。しかし、元受会社の所長の告げた解雇理由はどう考えても理由になっていなく、あきらかに解雇権の乱用です。つまり、不当解雇なのです。そのことを力説して解雇に応じる必要はない、寮を出る必要はない、闘うべきだと告げたのですが、長い期間世話になっていた会社への反逆というか抗議に対して抵抗があるらしく、寡黙で実直な性格のU君は私の話を聞きながら力なくうなずいているだけでした。 31歳になるU君は、九州の福岡から浜岡原発で働くために出て来ていました。働きだして3年9ヵ月になるそうですが、その待遇と言えば当たり前のようにボーナスも有給も失業保険給付の権利もなく、4年近く連続して働いているというのに労働基準法で定められている社員として雇用されるという話もまったくなかったそうです。それに、会社の所長の立場にある者なら必ず知っていなければならない、「30日以上前の解雇予告」もなければ、会社が解雇をする相手への30日分以上の平均賃金の支払いもないまま、郷里への旅費だけ渡して追い出そうとしているのです。 聞いた話では、居酒屋「W」の経営者はかなりのトラブルメーカーで、これまでにも飲みに来た客と幾度となく喧嘩騒動を起こしているようでした。居酒屋の経営者は地元民のエゴを振りかざし、地元住民とのトラブル問題に対して神経質な中電は、よそ者のU君だけを罰するというかたちを取って問題の決着をはかったのでした。今日の午前中にU君に会って話を聞いただけで、まだどのようにするという具体的な方法は講じていないのですが、これからU君とよく話し合って最善の方法を模索していきたいと考えています。このコーナーはもちろんこれで終わりではなく、これから始まるであろう会社側との交渉及びその経過を順次報告していきたいと思っています。 2010年1月13日 ![]() 報告 その2
その翌日の午前中に御前崎市議の清水さんと共に、U君を磐田にある「JMIU(全日本金属情報機器労働組合)」の組合事務所に連れて行きました。地区の委員長はたまたま所用で出向いていたので書記長の長尾さんに事情を説明し、そしてU君の納得と了解を得て組合員として加入してもらったのです。組合員になることによって、会社側と団体交渉を行なうことができます。団体交渉で解雇の撤回を求めることはできるのですが、一度解雇を宣告された浜岡原発内で再び作業員として働く気にはなれないらしく、U君はやめる方向で話し合いをしたいという希望を述べていました。 そうすると、組合の要求するのは最低30日分の解雇手当は当たり前のこととして、その他にも労働者の当然の権利として失業保険の給付を受けられるようにすることを考えていました。失業保険の給付は、解雇のあとでも事業主が遡って失業保険料の支払いをすれば、給付の権利が発生するのです。だから、U君が失業保険を受け取れるようにするためには、嫌でも事業主に保険料の支払いをしてもらわなければならないのです。組合がとりあえず団体交渉する相手はU君が所属している大阪の派遣会社ですが、その派遣会社はU君が所持していた名刺によると株式会社登録をしているので、失業手当を受給できるようになるのは比較的に簡単なように思われました。 これが前時代的な親方と子方というように、半分ヤクザのような怪しげな連中がやっているような登録もしていない、ほとんど実体もないような派遣会社に所属していたなら問題は極めてややこしくなるのですが、株式会社が相手ならたやすく解決できるはずです。もちろん相手が話し合いに応じない場合には、浜岡原発で仕事をしている元受会社の「T」と交渉することも考えています。U君は失業手当を受けられるようになると聞いて、とても喜んでいました。その間に別の仕事を捜すことができるからです。それから、会社の寮を16日までに出るように言われている問題があります。16日と言えば2日後のことです。私は「出る必要はない。少しでも粘って、不当解雇に対して抵抗の意思を示すべきだ!」と強く言ったのですが、心根のやさしいU君には 会社側の嫌がらせを受けながら寮に居続けるのは無理だというのがよくわかっていました。 それで仕方なく、私の友人の身内がアパートの管理人をやっているので、この人に頼んで安く入居させてもらうようにお願いしました。アパートに入居するには、御前崎市のような田舎でも敷金などを合わせて最低10万円以上かかります。管理人をやっているその人は、家賃の3万5千円を含めて入居の時には10万5千円必要だと言っていたのですが、事情を汲んでくれて、最初1ヵ月分の家賃を入れてくれれば残りは月賦でも良いと便宜をはかってくれたのでした。 手続きさえ済めば、いつ入居しても良いとのことでしたので、U君と相談して今月の17日に引っ越すことになりました。独身とは言っても、4年近く住んでいれば荷物もかなり増えています。軽トラックを友人から借り、引越しには私の仲間数名が手伝うという相談がまとまっていました。しかし、引越しの前日の16日朝にU君から電話があって、大阪の派遣会社の社長が別の現場での仕事を紹介するから、一時的に郷里の九州に帰ってくれと言われたというのです。派遣会社の社長は、郷里に帰らず御前崎市に残ると言うU君に危機感を抱き、やむなく新しい仕事を紹介するという措置に出たのだと考えられます。その別の現場とは、3年前の2007年に地震騒動の起きた柏崎刈羽原子力発電所内とのことでした。 U君はどうすべきか悩んだそうですが、結局働きたいという気持ちが強く、派遣会社の社長の条件を呑むことにしたのでした。引越しの予定だった17日の早朝、彼は大阪に向かいました。社長には何度か会ったことはあるそうですが、大阪にある事務所に出向くのは今回が初めてとのことでした。そのあと、組合からファックスが届いてU君が労働組合に加入したことを会社は知ったのですが、返信のファックスには、U君に対して「退職願い」を書けと指示した覚えはないと記入されていたそうです。そのあと私は、18日に再び浜松医大病院に入院することになり、今回のことに関する報告が遅れてしまったのですが、その他にも状況の変化に期待する気持ちがあり、そのことも報告が遅れた一因となりました。 ![]() 「ホールボディカウンターの身代わりについて」 U君は私たちの前から去って行ったのですが、その前に彼は4年近く所属していた「T」という会社のことをいろいろと話してくれました。浜岡原発内に入っている「T」という会社の浜岡営業所での従業員数は6名なのですが、それに対して臨時作業員は16名という異常な多さです。それに臨時作業員を派遣している会社もバラバラで、その作業員たちに支払われる給料もバラバラの状態だと語っていました。そんな彼らのすべてが日当契約で働かされているのですが、日当1万6千円の者もいれば、あのような命を削る危険な作業をしているのに1万円にも満たない、日当8千円や9千円で働かされている労働者もいると聞いてびっくりしたものです。 U君の所属していた派遣会社は賃金的にはそれほど問題はなかったそうですが、中には派遣会社とは名ばかりのあくどい親方も実際いるようでした。ある若い労働者は、不当に低賃金で働いていることに嫌気が差し、やめさせて欲しいと何度訴えても派遣会社がやめさせてくれなかったそうです。金ズルを逃がしたくないというのが本音のようです。その挙句、この若い作業員は無断で寮を逃げだして行方知れずになったのでした。この脱走劇に、「T」という会社は慌てふためいたそうです。1人の派遣労働者が寮を逃げだしただけならたいした問題ではないのですが、この脱走劇には浜岡原発からの退出という大きな問題が残されていたからです。 U君から聞いた話でもっとも驚いたのは、これから語ることです。浜岡原子力発電所から退出するには、中電から借り受けていた「IDカード」と「通門証」を返納しなければなりません。その他には、「ホールボディカウンター」を受けて内部被爆などの問題がなければ、初めてその人の退出が認められるのです。しかし、当人が派遣会社のやり方に嫌気が差して脱走しているのですから、IDカードと通門証のことは何とかなっても、もっとも問題であるホールボディカウンターを受けさせようがないのです。原子力発電所から退出の時にホールボディカウンターを受けないということは、喩(たと)えるなら海外旅行に出かけ、その国から出国の時に手続きをしなかったと同じ意味があります。無断で出国したと同様の重さを持っているのです。苦慮した挙句、株式会社「T」という会社の取った方法とは替え玉でした。つまり、ホールボディカウンターの身代わりだったのです。 ホールボディカウンターとは、人間の体内に摂取された放射性物質の量を体外から測定する装置、もしくは測定すること自体を差しています。原発内で働いている時に定期的に受けたり、退職や移動などの理由で原発から退出する時には必ず受けなければならないのだが、これを「T」という会社は本人がいないからという理由で、替え玉という方法を使って他人に受けさせたのです。これは明らかに違法行為だと思うのですが、どうでしょうか。この替え玉、・・・・つまり身代わりを、「T」という会社の所長から強要されたのはU君でした。年恰好が似ているから、そして同じ現場で働いていたからという理由で選ばれたのです。昨年(2009年)の暮れのことだったと彼は述べていました。 あくどい派遣会社や、ヤクザまがいの親方のもとで働かされている労働者が数多く浜岡原発内で作業に従事しています。今回は「T」という会社を例に取ったのですが、このような会社の臨時作業員のほとんどがU君のようにボーナスも有給も失業保険給付の権利もなく、長い期間連続して働いても社員として採用される希望のない労働者たちです。「T」という会社のように、臨時労働者間に大きな賃金格差があるということも問題です。これらの問題の改善や下請け会社への指導を中電にお願いしたいと考えているのですが、中電殿いかがでしょうか? 2010年1月26日 |
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